浅草『小柳』の鰻重


いつからか、どうしてなのかも判らないけれど、なぜか浅草でのイベントの前には鰻重を食べることが多い。
それが、『神田きくかわ』であることもあれば、浅草は公会堂近くの『小柳』だったりもする。


鰻重はなにかにつけ、都合がいい食べ物なのだなと思う。
まず、イベントの前に鰻を食べることで気合いが入る。
さらに、鰻を焼いて鰻重となって出てくるまでの間に、お新香などを妻にしながら、お銚子を一杯いただくことができる。
このお銚子や冷酒は決して酔うためのものではなくて、ちょっとした結界のはられた世界に入り込むための、お清めなのだ。
だから楚々としたお新香や、塩キャベツでいただくのが丁度良い。


さて、先日12日の『小柳』の鰻重。



御飯はごく軽く、さっくりとお重にならび、その上にこれまた無理なく鰻の蒲焼きが載る。
照りの具合からも判るように、コクのあるたれには違いないが、かといってべとつき感もなく、さらっとしている。
『神田きくかわ』の鰻重が、力の入った名品なら、こちらは力の入らない、肩の凝らない名品だと思う。
とかく、タレがどうだの焼具合がどうだのと、満身で感じて力が入って食べてしまうところ、この『小柳』の鰻重は座敷に座って雑談をしつつ気が付けば胃袋に収まっている、そんな存在なのだ。


同席の遠来の御客さま方も、すっかり座敷に馴染んで「うまい、ここいいわ」を連発する。
ここで食べていると、ちょっとしたお客さんが見えたときに鰻重の出前をとって、自分の家の座敷で食べているような錯覚をする。
居心地いいのはそのせいにちがいない。
気負わずゆるゆると美味しい鰻重を食べるなら『小柳』なのだろう。


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『小柳』


東京都台東区浅草1-29-11
03-3843-2861
営業時間:11:30〜21:00(木曜定休)



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『神田きくかわ』の鰻重はこちら。


成田山新勝寺参道にある「菊屋」さんという日本料理屋さんには素敵な「二段鰻重」があるらしい。
(女将はMacユーザーらしい)
ひできさんと鰻対決をしているわけではないけど、いろんな鰻屋さんがあるということで、またTBを送ってしまおう。