『獣神バロン』と『魔女ランダ』



それは朝、突然始まった。
普段平静の私に魔女ランダが挑んできたのだ。


「獣神バロン」と「魔女ランダ
バリ・ヒンドゥーの物語の中で、この2つは善悪の対比をなす神と言われている。
その2つの戦いはいずれが勝つとも負けるともない、永遠に続くもの。
人間の身辺に起きる良いこと、悪いことも、みなこの2つのバランスからきている。


いままで私の頭の中で、この2つがこんなにはっきりと戦ったことはなかった。
このガンガンと戦う2つに振り回され、私はなす術もなく、頭を抱える。
もうやめてくれと、両手の拳で自分の頭を殴ったりもした。
壁に打ち付けてもみた。
それでも、この2つは戦いをやめようとしない。



「獣神バロン」が思わず怯むと「魔女ランダ」がとどめをささんとばかりに急襲してくる。
しかし「獣神バロン」も負けてはいない。
ある時は「獣神バロン」が優勢に、ある時は「魔女ランダ」が優勢に、
そのたびに私の心は激しく揺れ動く。
戦いは延々と続く。


いったいどうしたら、この2つは私の頭の中で戦いをやめてくれるのだろうか。
この2つが自分自身なのだろうか、だとしたら、この2つの存在を今意識している自分はいったい誰なのだろう?


ますます私は憔悴しながら、混乱に落ちていく。