『風』辻まことの『多摩川探検隊』
いや、もっと春の兆しを知る頃に読めばよかったかな。
辻まことの絵は幼い頃に感じた景色と匂いがする。
決して細かな描写があるわけでもないのに、とつとつとした詩のような
そしてテンポのよい言葉に、つい脳裏はスクリーンとなって、あの頃の情景がうかびだす。
『風』
君がもしいた稜線の手頃な岩に腰をおろして、ハイマツの上を駆け抜けてくる風に吹かれているとする。あるいは、倒木にもたれて木々の間をすぎる風の音を聴いている、または・・・・・・つまり山の中のどこかで帽子をとって、あまり激しくない風の流れに会ったとき、君はどんな感じがしますか。私はいつも山の風の中に、彼らの経験してきた旅の話を聴きます。谷間の陽かげにわく小さな泉の話、そのそばの苔の香り、乗越しの荒れた石屑の話、しばらく運んだ渡り鳥の群れのこと、話を聴くばかりではなく、ときには頼んで私の心を乗せてもらいます。私はこの原稿を都会の一隅にある知人のオフィスで書いてい私に向かって冷房器から風が吹いてきます。風のオブジェという奴です。ブウブウいってます、ただブウブウいってます。ブウブウ。
多摩川探検隊 (小学館ライブラリー―OUTDOOR EDITION)
- 作者: 辻まこと
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 1993/11
- メディア: 新書
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