見えない脅威に向かうために


巨大地震から5日目の晩となりました。
地震津波そのものの被害、そして福島原発の事故。
目にみえる痛ましい傷跡と、被災した方々の苦しみ、そして吹き飛んだまま現存する原発
繰り返し放送される映像に、何度みても心が痛み、不安は消えません。


あまりに身近なことですが、いま自宅マンションでは大規模修繕工事がはいり、
ちょうど足場が組み上がり、外壁改修工事の実作業に入るところでした。
ところがここの住所がグループのどこに入るかぎりぎりまで不明な状態で、
電気を使えなければ作業ができないと、
結局、早々に今週1週間工事休業となりました。
ですが結果的には昨日、今日と停電するグループには入りませんでした。
鉄道の運転もぎりぎりまではっきりしなかったので、
職人さんがどれだけ現場に来れるかも、予測できないせいもあります。
こんな小さい現場でも、作業1週間遅れれば竣工もずれこみ、
単純に支払いも遅れ、その1週間で首をくくらないとならない会社さえ
たくさん出てくると思います。


製造業に至っては一度ラインを動かせば、急には止められないものが多く、
無理にとめれば製造課程のライン上にあったものは、
すべて不良として使い物にならなくなります。
そのために停電予定以前から万全を期して、停止させたところも多いはずです。
逆に、ひとたび停止させれば、起動するのもまたボタン1つではいかない。
トヨタが休業とした理由もよくわかります。


今回の計画停電輪番停電)は予期無く急に需要パンクして大騒ぎになることを回避するための策だったのでしょうが、
あまりに根拠不明な割り振りでの停電、しかも実際にはするかしないか判らない停電で、
どれだけの企業が振り回されたか判りません。
そしてその状態でも普段と同じように首都機能や業務を機能させようとすれば、
鉄道は一部動いても、結局役に立たない動きで中途半端。
鉄道を避けて、普段使用しない自家用車を利用し、給油に走る。
どこからか、ガソリン不足の噂も流れ、いつもなら慌てて給油しない残量でも、給油に並ぶ。
日中でもガソリンスタンドの前には長蛇。


原発事故が収束しないかぎり、急落した株価も回復は難しそうで、
それはもう、繰り返して押し寄せた津波のように、何度もあまたの業界に打撃を与えていくでしょう。


見えない放射線の脅威だけではなく、さらに他にも見えない脅威が
日に日に襲いかかってくるようです。


「いまだかつてない」「想定外の」「未曾有の」
こういう形容詞がしきりに言われます。
それを否定はできない、ですが、その言葉で済んでしまうことでもありません。
国民は自国の一大事として、できる限りの協力をしようと気持ちを一つにしようとしています。
ならば、ここでその力や気持ちを無駄にしたり不合理に終わらせて萎えさせて欲しくありません。
輪番停電ひとつをとってみても、思いつきだけではなく、叡智溢れた知恵を働かせて、限られた時間の中で最善の仕組みをつくって欲しい。
その一つ一つの積み重ねがなければ、かつて第二次世界大戦後の日本を復興させたような日本の力は発揮できずに終わってしまいます。