製造業と建設業


先月の末、3日間にわたって有明のビックサイトで産業用バーチャルリアリティ展(IVR展)が行われ、久々に出展社サイドとしてブースにたった。
このイベントは、他に「設計・製造ソリューション展」「機械要素技術展」という、製造業系の一大イベントと同時開催で、入場者もこれら3つのイベントを同時にみる事が多い。(どの展で入場しても、他の2つの展はその入場証で入場可能だし、会場はホールの中に仕切りがない。)


そこで、否応なしに思い知らされたのは、製造業の勢い、そして景気の良さだ。
「設計・製造ソリューション展」サイドで展示されているプラント設計用専用CADソフトウェア1つとっても、いやぁ...すごい、すごいお値段。
あんなものが1本、2本と売れていったら、本当に不況などという言葉は存在の必要もない。
ソフトウェアが売れれば、教育にもお金をかける、関連する技術がどんどん向上し、さらに次の投資を考えるという具合に、良い方向への連鎖が勢いづく。


こちらではVRバーチャルリアリティ)ということで、特に対象業種にはこだわらず3次元CGソフトウェアのデモンストレーションをしていたわけだが、このソフトウェアは日本では建築・建設系ユーザーが多いため、普段はそういった業界の顧客と接し、話をすることが多い。
当然、出てくるのは今、建設業(また、建築業)がおかれている状況で、これは聞けば聞くほど、「理不尽」という言葉でしか表せないのではないかと思うほどの苦境だ。


展示中、どうみても業界違いのおじさまが興味津々にデモンストレーションを覗いて、
「へぇ、こんなこと簡単にできちゃうのっ!? 俺らの使ってるんじゃ、できないよ。これ、いくらすんの? 高いでしょ?」
「2●万円です」とお答えすると、
「えっ?そんなに安いのっ?!?!」と驚かれ......
(あの時の顔は、おもしろいおもちゃをみつけて「買いたいな」と思った時の顔だった)


建築・建築業界では「2●万円です」といっただけで、
「ああ、そんなにするんだ...」と言われておしまい。
たぶん、1桁、いや2桁ちがう世界。


「ものづくり」という言葉をキーにすれば、建築・建設だって、家や道路や橋を「製造」している製造業ではないのか?
なのに、なぜ、こんなとんでもない差が発生してしまっているのだろう?


建築・建設は「製造する」というより、「アセンブリ(組み立て)」だからか?


そんなことで、なんとも釈然としない気分でいたのだが、今夜たまたまひできさんの日記「地域も建設業も生態系なのだ」をみていたら、

建設業は好むと好まざるとにかかわらず、製造業などと違い*1垂直統合が進んでいない。大手ゼネコンでも、ハウスメーカーでも、町場の工務店でも、仕事をする地域の専門業者にその仕事のかなりの部分を負っている。大工さんとか、設備業者とか、内装業者などさまざまな業種が必要なのだが、その行動半径は広いようで狭い*2。つまりは、どこに仕事を依頼しようと現場で仕事をしている人は案外いっしょだったりする。

地域も建設業も生態系なのだ


この中の「垂直統合」という言葉に「おやっ!」と思うことがあった。
そして「建設業も生態系」と仮定しているところから、ふっと、頭のなかに生態系のモデル(正確には「食物連鎖」のピラミッド)がうかんだ。


製造業に関しては、建設のそれとは比べものにならないほど、多数の深い下請けがいると思う。
生態系としていうなら、あの三角形が高く急な(とがった)のが製造業、なだらかで底辺が広いのが建設業かなと。


本来、沢山の要素を考え、そして書かなければならないのだろうが、なぜかこの三角形のモデルで妙に説明がつくような気がしてならない。



(「続、製造業と建設業」につづく)