『フェア』と『オネスト』

先日の日記、『日出(いず)る国の工場』読了の中で、村上春樹安西水丸がいろいろな工場を訪ねて大人の社会科見学をレポートした中に、「アデランス工場」があったが、その「アデランス」の研究室の張り紙にこうあったそうだ。

  • プログレッシブ(進取的に)
  • インターナショナル(国際的に)
  • インテリジェント(知的に)
  • センシブル(感性豊かに」
  • スピーディー(機敏に)
  • フレキシブル(柔軟に)
  • フェア(公正に)
  • オネスト(誠実に)


これが営業・販売主体の部署であれば、また違った言葉が出てくるのかもしれないが、研究、開発、製造といった部門で、「先進」を維持するには、この8つは確かに欠くことができない。
この見学があったのは、今からもう20年ちかく前の事だから、世の中は高度成長時代の後期でさまざまなものに研究費が充てられ、研究者もプライドを持って職務にあたっていたと思う。その中で、あえてこの8箇条が掲示されていたという事は、この会社の姿勢を読み取ることができる。


特に最後の2つ、「フェア」と「オネスト」は最近やたらと目につく「不正」・「偽装」のニュースの当事者・当事社に欠落してしまったものだろう。この欠落という現象とそれがおきた事象をうまく言い当てる言葉がみつからなかったが、ももちさんは「種の論理・中景」の崩壊だといっている


ある白い疑惑の会社では、不正が明るみにでた後の会見で「挫折を知らなかった」と言っていた。
それはまるで「幼稚園、小学校、中学校、高校...と順風満帆に進学をし、最後に大学入試で躓き、立ち直れなくなってしまった学生のようで」と、言い訳を言っているようで見苦しい。「挫折を知らなかった」のではなく「フェア」と「オネスト」を社内のミーム辞書から削除してしまった結果だというのに。