大和路塔巡り(その1)『室生寺』


10月28日、遠方より急にやってきた友と、これまた急に古都・奈良を巡ることになりました。奈良は高校の修学旅行以来一度も訪れていません。京都は大阪出張の帰りなどでも、ほんの数時間の余裕があれば立ち寄れてしまいますが、奈良はなかなか訪れるチャンスのない場所でした。なんと奈良の友人、M本さんが案内をしてくださるということで、お言葉に甘え、何はなくとも徒歩やバスでは回れない『室生寺』へいくことをお願いしてしまいました。


室生寺』へ行きたかった訳はいろいろありますが、高校の修学旅行で訪れた寺院の中でひときわ印象深かったところの1つであり、さらに数年前、五重塔が台風の暴風による倒木で破壊され、数年にわたり補修工事を行って、元の姿に復元されたということもあります。日頃寺院建築を見て歩くことが好きですが、特に「五重塔」「三重塔」「多宝塔」の美しさと、時代によって異なる様式の趣を見るのはとても楽しいのです。
そのようなこともあり、今回の大和路ツアーはすっかり「大和路塔巡り」。本来案内をされる客人の2人は、よもやこんなことになっているとは分からなかったでしょう。


さて、奈良への経路はいろいろあります。
・新幹線を利用し、京都経由奈良線で。
・飛行機を利用し、阿倍野まで空港バス、その後JRで。
・飛行機を利用し、奈良まで空港バスで。
・夜行ハイウェイバスを利用し、東京から奈良ま直行で。
この4つが主なルートですが、行きは待ち合わせ時間に遅れないことを最優先としたので、一番上の新幹線利用としました。


奈良駅でM本さんに10時半すぎにピックアップしていただくために、28日は自宅を6時半に出発。品川発07:20ののぞみ7号で、京都に到着し、09時50分発の奈良線みやこ路快速」にのって約40分余り。無事定刻に到着して、久しぶりにM本さんの顔をみました。バルセロナからの友人Santiとその彼女Yoriを宿泊予定のホテルまで迎えにいくと、二人仲良く1階のスイートショップ前でコーヒーを飲んでいました。Santiのおなかの出てしまったこと・・・5年前は痩せすぎかもと思うほどほっそりし、髪も長かったのですが、5年の歳月はすっかり立派な貫禄に変えていました。かなりの幸せ太りのようです。


車に乗り早速『室生寺』へ向かいます。ルートは高速道を使わない、まさにのどかな大和路を進みます。途中、道の駅「針テラス」で休憩。相変わらずSantiは煙草好き。そしてM本さんも・・・好きを越えた喫煙者の様子。これはかなり心配です。




山深い路に入り、車をおき徒歩でいよいよ室生寺の入り口まで到着。
この門前の印象はおぼろげながら記憶に残っていました。やはりこの「女人高野室生寺」とかかれた石表は印象的でしょう。この文字の上には、この寺に墓所がある徳川綱吉の母「桂昌院」の実家の紋が入っています。



境内には大きな杉の大木が見られます。




仁王門をとおりぬけ、まず最初の石段が現れます。この風景もはるか○○年前の高校生の時の記憶そのままでした。
この周辺は石楠花(しゃくなげ)が沢山みられ、初夏となればさぞ綺麗なことでしょう。



階段を上りきると、目の前に「金堂」が現れます。写真は撮りませんでしたが、建物は柿葺(こけらぶき)の屋根で土をつかわない板壁となっています。「弥勒堂」を左手にみながらさらに進むと、今度は一段高いところに「本堂」が現れます。
こちらの屋根は「桧皮葺」(ひわだぶき)で、板壁になっています。




「本堂」から左手に進むと、目前、階段の上に「五重塔」が現れます。
思い描いていた姿より、さらにこじんまりとした、高さわずか16.2mの塔で、通常の五重塔の1/3ミニチュアモデル位でしょうか。
ただ、この大きさが逆に周囲の木々や草木と良く調和し、虚勢を張らない自然でおだやかな様相をみせています。





塔の左手奥には、大きな杉の切り株がありました。おそらくこの杉の木が倒れ、一瞬にして五重塔に被害を与えたのでしょう。各層の屋根の逓減率は小さく同じくらいの大きなの屋根が重なっているように見えます。




修復の際、もともとの部材をそのまま元の通りに組み、一切の調整をしなかったのでしょうか、屋根の先が通っていません。




(ズームでピントが甘いですが)ここの塔の上には、他の五重塔によくあるような「水煙」ではなくて「相輪」が乗っていました。




この五重塔をすぎると、いよいよ奥の院への階段となります。女人高野ということで、奥の院もそうたいしたことはないだろうと、甘くみていました。最初の頃の階段は急ではあってもまだ、続けて登り切れる自信が十分あるものでしたが、上にいくにつれ、階段の踏面も小さく、登りにくくなり、最後は最も急な階段が壁のようにあります。




これがダメ押しというのでしょう。傍らの手すりを掴みながら、歩きにくい階段をようやくのこと上り詰めると、「位牌堂」「御影堂」があります。「位牌堂」は清水の舞台を支える懸造を小規模にしたような作りで、崖に向かって立っており、眼下には室生の郷がみえます。




ここで少し休んだのち、再び同じ急な階段をおり、一気に室生寺の入り口まで戻りました。






(大和路塔巡り(その2)『お弁当』につづく。)