Altitude 1770m 『夜叉神峠』


「登山口」とかかれた標識をみると、なぜかワクワクする。
どの登山口もそうなのだろうか、最初の数歩から奧、行き先がカーブして見えない期待感からだろうか。
この「登山口」は「夜叉神峠」そしてそれに続く「高谷山」に登る登山道の入り口だ。




甲府方面から52号線を西進する。正面に南アルプスの山々が見え、それが徐々に近づいてくる。釜無川の上を「信玄橋」で渡りさらに西進。中部横断自動車道のガードもくぐり県道20号線を西へと進むと、出光SSで直進する先の道が急激に細くなる。そこを右折、さらに芦安入り口で左折してひたすら西へと向かう。御勅使川と併走しながら道路は徐々に山深く、芦安温泉の街中を抜けてから急坂急カーブとなり、さらに上り詰めていくと、夜叉神トンネルの手前に、この登山口が現れる。(夜叉神トンネルから先は冬期通行止めとなるようで、今年は11月15日より通行止めとなっていた)
登山口前には日に何本かのバスが通っているようで、バス停もあり、また公衆トイレと駐車場がある。


登山口から上り初めて、いきなり急坂が続く。少し体調が良くなかったせいもあるが、このいきなりの急坂でペースを狂わせてしまい、このあとひたすら続く上り坂の途中で苦しくなった。


カラマツやブナ、ミズナラの林の中を歩くのは気持ちよい。
ふと上を向けば、空は抜けるような青空に、葉の落ちた木立が、いかにも冬の始まりのようだ。




下草にクマザサが見え始めたあたりまで登ってくると、石積みがいくつか見かけられるようになる。
昔、炭焼きをしていた窯のあとらしい。



ひたすら登ること50分ほど、最後のとどめのように道は狭く再び急坂となり、何とか登り切るとそこに急に視界が開けた峠となる。
ここが標高1770mの「夜叉神峠」だ。




「夜叉神峠小屋」の前には木製のベンチとテーブルが2,3あり、そこで昼食を広げることができるが、何より目の前に広がる白峰三山の「北岳」(富士山に次ぐ日本で第二位の高い山)、「間ノ岳」、「農鳥岳」に目を奪われ見とれてしまった。




北岳」(きただけ)
3193m、富士山に次ぐ、日本で二番目に高い山。
3193mとはいうが、実は以前は3192mだったのが国土地理院によって改定された。

その経緯は次のサイトにあってとても興味深い。

北岳は3193mではないか? 

http://yamao.lolipop.jp/kita/kitadake.htm






間ノ岳」(あいのだけ)
3189m、日本で4番目に高い山。(とはいっても2位の北岳とわずか4mしか差がない。)山肌自体がずり落ちたような形で、カールと呼ばれる谷がある。これも戻ってから調べた事だが、この崩壊がなければ氷河期最後の頃は富士山より高い日本一の山だったかもしれないとのこと。





農鳥岳」(のうとりだけ)
帰ってから調べたところ、南東側の「農鳥岳」は標高3026m、北西側の「西農鳥岳」は3051mとなっている。
他の地方でもよくある「雪型」で、白鳥が首を伸ばした形になれば、農作業の開始の目安となったという。




目前の山々には時折、雪雲ではないかと思うような黒い雲がかかったり、また消えたりしていたが、夜叉神峠は快晴。
最高の視界を楽しめた。ただ、谷を渡り、そしてまた吹き上げてくる風は強く冷たい。
まるで体の中を鋭く突き抜けていくような冷たさと、木々が揺れ鳴動する風音を聞くと、じっと座りこんでいることはできなかった。


ここからさらに、「高谷山」まで30分ほどという標識があるが、そのままもときた道を下って帰った。
40分弱で下りきってしまう。
上りでは感じなかったが、下りでは坂は思ったより急だった。乾燥しきった落ち葉の中に砂利や石がまざり、足をおくとズルズルと滑る事もあり、また山小屋へ引いているらしい給電?あるいは給水のパイプが露出する部分に足がのると、滑りやすい。


登山口までの間に途中みかけていた温泉を目指す。