「何もしない」をしに行く4『オーベルジュ コムニ』のディナー


その3からのつづき


至福の午後の一時をシャンパンと軽い料理ですごし、夕刻に部屋に戻って心地よいままにソファで本を読むもくろみ。
窓をあけていると、外からは草の香りのする適度な涼しい風が入ってきて、本をもつ手がだんだん重たくなってくる。
瞼も重たくなってくる。
ああ、パソコンもない幸せ・・・


と、まどろんだ瞬間、迂闊にも切り忘れた携帯電話に我に返らされてしまった。
それも、よりによってそうしょっちゅうはない新規の見積依頼。
ああ、これだけは無視して見なかったことにするわけには行かず、やむを得ず電話と携帯電話からのgmailであれこれと。
相変わらず外からは、気持ちよい風が吹き込み、仕事の世界に戻された自分の廻りをまわって、「仕事なんて早くやめようよぉ」と誘惑の手で撫で回されているような感じがした。


どの位のロスタイムを作ってしまっただろう。
早く気持ちを元に戻そうと、ロビーにあったCDを部屋備え付けのデッキでかけて聞いてみる。
ドボルザークの『アメリカ』。
なんとなく田園風景。



再び、何も考えない世界へと・・・



ディナーは20時から。
普通の温泉旅館などに旅すると、「夕食の時間は何時がいいですか?」と聞かれはするものの、遅い時間をいえばなにげなく嫌な顔をされ、結局普段は食事をとっているはずもない早い時刻に夕食を口にすることになってしまう。
でも、ここでは「夕食の時間は?」と聞かれた時点ですでに何も考えないモードに入っているので、何時なんて判断する余地もない。
「では20時くらいでは?」という言葉に「はいはい、そうね」と頷いて後から、「20時からのディナー、なんて余裕!」と喜んだりする。


20時少し前にロビーへ出て行くと、ずっと待っていてくれたかのようにスタッフの方が2階のレストランへと案内をしてくれる。
他に食事をしている人達が数組。
私は一人でのディナー、さて周囲が気になるかな、と一瞬思えば、奧のカーテンで仕切られたテーブルへと案内された。
1枚のカーテンが半分しめられているだけで他の先客の視線が全くなくなると、妙に落ち着いた。



お料理は『根室産帆立貝とズワイガニのテリーヌ』から。



すでに午後のサウナのあとの一杯で、シャンパンをしっかり飲んでしまっているので、ワインは白からスタート。
このテリーヌに良くあうワインをグラスでお願いする。





2杯目も白。


なんといっても、このフォアグラにあうワインを。
ルバーブワインはほのかなルバーブの酸味がするようで、しかもサッパリとして、まったりとしたフォアグラの食感のあと、適度に口の中をクリアにしてくれるよう。



『ランド産フォアグラのソテー キノコのリゾット添え』



魚料理は『青ソイのポワレ バルサミコソース』。



次の鶏肉料理にぴったりの赤ワインもグラスで。



『ギタローシャモのロースト 粒マスタードのソース』



デザートは『フルーツのグラタン』



そしてフロマージュは無しの代わりに、デザートワインを1杯。
『Vin Cuit』(ヴァン キュイ)
濃厚な味わいなのに、飲んだあと甘さがべったりと残らない上品なデザートワイン




その5へつづく