口紅の効用


ここ十数年、銀製品のアクセサリーを身につけたことがありませんでした。
なぜかといえば、すぐ表面がくすんで、さらに時間が経つと黒っぽく汚くなってしまうから。
東京の空気が汚いせいでしょうか、特に自宅前は交通量の多い、片側3車線の国道で、排気ガスに含まれる亜硫酸ガスによる酸化の影響かもしれません。
クロス(布)式の銀みがきを使って磨くと、多少は綺麗になるものの、どうもすっきりしないし、練り歯磨きで磨くと良いという話も聞きましたが、研磨剤が入っているので敬遠。
もうあきらめていたのです。


ところが、先日あるところで「銀のアクセサリーは口紅をつけて磨くと綺麗になる」という話を聞き、週末を待って試してみました。


まずティッシュペーパーに口紅を塗り、それですっかり変色してしまったTIFFANYのドロップ型のネックレス・トップを拭いてみました。
これは何かの景品でいただいたもので、一度だけ身につけ、次につけようと思ってみたら、すでに変色していたというもの。
すると.......


左:拭く前  右:拭いた後


銀色が黄色味をおび、部分的に真黒くなっていたものが、綺麗な銀色になって輝きました。
あまりの差にビックリ。



次は昔、タイかインドネシアで購入してきた純銀のチェーン。
これも東京に戻って、一度手にとって見てから、しまっていたものを次に出したときは真鍮のような色にくすんで変色していたもの。


左:拭いた後  右:拭く前


本当に二、三回拭いただけで、銀色が戻り、写真にとると輝いてつぶれてしまうほど。


どうも口紅の中に含まれる成分に、銀の化合物を分解する働きが含まれているようです。
数年も放置して諦めていたものが、綺麗になってしまったので、なんだか嬉しくなりました。


ただ、アクセサリーの形や形状によって、拭く物を選んだほうが良さそうです。
ティッシュペーパーは柔らかくて良いですが、複雑な細工のものは、すぐ破れてしまいますから、柔らかな布が良いかもしれません。
カット綿では、チェーンなどに引っかかって、具合よくありません。
狭い場所は綿棒に口紅をつけ、クルクルと回して拭くと簡単です。
口紅の色は特に何でも構わないようですが、濃い赤だと、色がのこって拭き取る手間が余計にかかるので、なるべく薄目の色の方がよさそう。


他にも、重曹水につける、塩水の中にアルミ箔をいれて、そこにつける...といった話も聞きますが、いずれも化学反応を利用するのでしょうね。
口紅による方法も口紅の中に含まれるある成分の化学反応かと思います。
もし、大変貴重なものであれば、念のため、見えない部分で試してみてからにしましょう。
(あくまでも自分で判断してください。)



一杯呑んでいるお隣に「銀製品がくすんでしまって...」と嘆いている女性がいたら、
口紅をかりて、さっとスマートに綺麗にして差し上げてはいかがでしょう。
きっと、明るい顔をして喜んでもらえるに違い有りません。




ですが......


人間のくすみだけは口紅では落とすことはできません。