『なぜ世界は不況に陥ったのか 集中講義・金融危機と経済学』読了

年を重ねるに従って「縁」というものを深く感じるようになってきたが、人の「縁」、そして書籍もまた「縁」だなと思う。
もっとも、その書籍の「縁」を作ってくれるのは「身近に良書を読んでいる人がいる」という、人の「縁」に違いない。


7つの講話(対談)からなるこの本はとても読みやすかった。
以前のエントリー「本の香り、インクの香り」でもかいたが、講話はちょうど大学の講義を聴くようなボリュームで、1つの講話に授業1コマと同じ1時間半をかけて読むのが丁度良かった。(講によって長短の差はあるので、若干の前後はあるが)
当然、それは経済に関して、とても知識が欠落している私であるからで、日常経済について論及できる人にとっては、1冊を半日もかけずに読んでしまうにちがいない。
それくらい読みやすい。(正確には、理解しやすいということではなくて、途中で挫折することなく読み続けられるといった方がよいかもしれない。)
そして、本来、最初から順番に読むべきなのだろうが、私は興味深い講話から読んでしまった。
そのことによって私の苦手な分野の1つ、経済に関する本を苦痛に思うこともなく読了してしまった。
「なぜ世界は不況に陥ったのか」という書籍タイトルの通りの内容だが、その解説をしていく上で、過去、そして現在の金融のシステムと実際の問題などに触れていることから、いままで知らなかった言葉の意味も知ることができた。


「対談」という形をとった本は、練りに練った言葉が綴られる本と違って、流れていく勢いがあり、そしてそこに自分を浸すことができる。
難しい言葉ばかりを並べあげるのではなく、話し言葉としての言葉が頭に入ってくるものがある。
普段苦手分野でなかなか入り込むことができない世界の第一歩は、こういう対談の記録が良いのかもしれない。





以下、自分のための覚えとして記しておく。(メモ)



【第1講】アメリ金融危機の深化と拡大


最初は「サブプライムローン問題」という名前で呼ばれていた、アメリカの不動産市場でのローカルな問題が、なぜグローバルな問題になったのか?
住宅バブルの発生によって崩壊した、しかしこれは日本でも80年代後半から90年代前半におきて経験していることであるのに、なにが異なるのか?

サブプライムローンは非適格物むけのローンの1つ。


日本の厳しい住宅ローン審査にくらべ、リスクの高い人でも住宅資金融資が受けられるようになった。
アメリカ国民の7割が住宅を所有している。


2008年春にはサブプライムローン問題も収束かというムードにあったのが、それ以外にも問題があることが露見。(隠れたリスクテイキング)


【第2講】世界的不均衡の拡大・危機の来し方1


今回の経済危機は、保守派支配の時代からリベラル派へ移行する歴史的転換点にあたる。そうした移行の契機になるもの。

ケインズ経済学は七○年代に死んだ。


政治家やマスコミはいまだにケインズの亡霊にとりつかれて、「定額給付金」とか変な政策が出てくる。(池田氏談)


日本経済は、幸か不幸か九○年代まではそういう激しい落ち込みをあまり経験してこなかったから、そこをぐちゃぐちゃにしてここまで来た。
だから不景気というのは、もちろんいいことじゃないけれども、国民が危機感を共有して頭を切り替えるきっかけになるのなら、私は悪いことばかりじゃないと思います。(池田氏談)


目先のことだけを見てはいけない。だからこそ三○年ぐらいのタイムスパンで振り返って考えましょうということを、いままさにやっているわけです。(池尾氏談)

【第3講】世界的不均衡の拡大・危機の来し方2



【第4講】金融危機の発現メカニズム


なぜ繰り返しおきてきた経済危機を事前に避けたり、被害を軽減することができないのか?



【第5講】金融危機と経済政策



【第6講】危機後の金融と経済の行く末



【第7講】日本の経験とその教訓






これらの詳しい答えは勿論、この本を読むことで判る。


なぜ世界は不況に陥ったのか

なぜ世界は不況に陥ったのか