天に花、地には人


『桜の花はひどくひどく残酷だ』
そういっていながら、それでも花を見にいってしまう。
拒絶して籠もっていたいのに、見にいってしまう、その事自体が残酷なのかもしれない。



自宅から歩いて10数分の洗足池公園。
なんと中央にある池には流れこむ川がない。
湧水でできた池。
周囲をくるっとまわる小径があって、短時間でちょっとした景色の移り変わりが楽しめる。
周辺には勝海舟夫妻の墓、西郷隆盛留魂詩碑、徳富蘇峰詩碑...
そして鎌倉時代に遡れば、日蓮が足を洗った際に袈裟をかけたという袈裟掛けの松まである。
池をのぞむボートハウスはレストランで、初夏から秋にかけては、ここのテラスで食事をすると気持ちよい。
      

決まっているわけではないが、なぜかここは池の周りを時計回りに歩く人が多い。
最初に目をひくのは、洗足八幡神社前のこの不思議な八重桜。
1本の木に紅色と薄桃色の花をつけている。



北側の小さい斜面には桜の林。
そこには屋台が並び、呑めや唄えやの人、人、人。



花見とはいっても、花を見ている人はなく、呑めや唄えやの人、人、人。



花を楽しんでいるのは、そぞろ歩きの人。
すずなりについた花は今日が満開。



桜の精になりそうな可愛い女の子が二人。
双子かな、1つ違いの姉妹かな。
一人の立ち位置がきまると、もう一人の子が、あららら。
離れてレンズを覗くお父さんはなかなかシャッターを押せずに苦笑。



今年も花の下をただ歩いて抜けただけのお花見。
でも、一箇所でふと立ち止まり、じっくりと花を見てしまった。



絶対に何かある、一つの花をじっと見つめていると、おかしな気持ちになってくる。
桜の花はやはり狂気を持っている。