中越の雪山を見ながら『峠』を読む


車中で雪山を眺めながら、この本の冒頭を読む。
これはきっとすごくダイナミックな読書法なのだと思う。


峠(上) (新潮文庫)

峠(上) (新潮文庫)



南魚沼、浦佐駅付近。
この7年間、全く同じ時期、同じ時刻にこの場所を通勤で通っている。
毎年4月には駅前の平地もまだ雪深く真っ白で、八海山や駒ヶ岳を始めとする山々は5月半ばすぎまで雪を頂いているのを見ることができたのに、今年は例年より雪の少ない冬がすぎ、初回の授業のあった4月14日にはまるで雪のない世界で驚いていた。
ところが末になって寒波が再び戻り、数日前にかなりの雪が降ったらしい。





この少し手前の越後湯沢も駅前の雪は無かったものの、同様に近くの山々は真っ白だった。
三国峠群馬県沼田から新潟県湯沢方面に抜ける国道17号線(三国街道)を抜ける難所中の難所。
今でこそ三国トンネルがあるが、当時はひたすら山腹のわずかな道を巡りながら、豪雪の中を歩いたに違いない。


年末のこの地は机上で読んでも想像を絶するが、目前に雪山を臨みながら読むこの下りは、耳もとを吹きすさぶ風の音、手を切るような冷たさ、そして雪崩や吹雪の恐怖を目の当たりにするようで、真に迫るものがある。

 継之助は、発った。
 道はいわゆる三国街道をとる。上杉謙信のころからの古道であったが、しかし、謙信のころには三国峠はない。
 三国峠は越後と関東とのあいだにそそり立つ峻険(しゅんけん)で、街道最大の難所とされ、江戸幕府の初期に切り落とされた。冬期、この峠をぶじ越えればまず命をひろったとみていい。
「一種の狂人かもしれない」


「『峠』(中、下)読了」につづく




南魚沼市・八海山、駒ヶ岳付近』



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三国峠



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