人々は老いても歌は変わらない『サイモン&ガーファンクル 東京公演』


平凡な書き方だが、いつかまた何年かたった後、自分で検索をするときのために、こう書き残しておかなければならない。

2009年7月11日、東京ドーム、17時15分開演。
サイモン&ガーファンクル 東京公演」
日本での最後の公演となるシリーズ。
満席。




最初の曲、「Old Friends(旧友)」。
うん?ちょっと声が掠れていない?
一瞬そう心配してしまった出だしだったが、それはさすがにやむを得ないと思った。
すでに名古屋、そして前日もこの東京ドームで公演をしたばかりなのだから。


1.Old Friends
2.A Hazy Shade of Winter(冬の散歩道)


それにしても「旧友」からのスタート、それはどんなに有名となった他の曲よりも、オープニングに相応しかったと思う。
互いを「My old friend, Simon!」「My old friend, Garfunkel!」と紹介する二人。
小学校からの親友が、デュオを組み、1970年に解散。
その後、何度かの再結成をしながらも、67歳になる今、またこうして数年の月日を経て再結成をし公演をする。
ブランクを感じさせない二人のハーモニーは一気に心にしみわたった。


3.I Am a Rock
4.America
5.Kathy's Song(キャシーの歌)
6.Hey Schoolgirl
7.Be Bop a Lula
8.Scarborough Fair
9.Homeward Bound(早く家に帰りたい)


ここでほんの少しの小休止。
映画「卒業」の映像 が、「The 59th Street Bridge Song」をBGM にしてスクリーンに流れる。


公演の来場者の年齢層は高かった。
曲のイントロをきいて曲名がわかり、わき起こる拍手も、歌に支障がでないようさっと盛り上がってさっと引く。
静かに歌い上げるナンバーでは曲のおわりに「ブラボーッ!」という声がかかった。
実に大人な観客だったと思う。


私は青春時代というにはまだ早すぎる年の頃が彼らの全盛期だったが、まさに青春時代そのものを同時進行で過ごした50歳台から60歳を越えた人達までが多数。
年配の夫婦もいれば、50歳半ば位の母親とその子供という組み合わせも。
彼らのキーは当時よりちょっと下がっていたし、アレンジの入った曲もあったけれど、響きあって生まれるハーモニーは何ひとつ変わっていなかったと思う。
聞いてきた私たちは20年、30年という月日ですっかり老いてしまったのに。


「人々は老いても歌は変わらない」


それはちょっと残酷な事実でもあると思った。


10.Mrs. Robinson
11.Slip Slidin' Away
12.El Condor Pasa (コンドルは飛んで行く)


「Mrs. Robinson(ミセス・ロビンソン)」、「.El Condor Pasa(コンドルは飛んでいく)」と、特に彼らのファンでなくても知っている人も多い曲が続き、場内はもうすっかり二人のハーモニーの中に。


id:hidekihさんが

歌ってはいても、S&Gの歌詞はどこかミステリアスだ。そう、ナーサリー・ライムのように暗号を含んでている。なぜ彼女は4月に来るのだろう?いまだにわからない。

いまだに、S&Gの歌詞は私にとっては、暗号のままだ。

4月になれば - HPO機密日誌


といっているように、今にして思えば歌詞の一言一言に耳を傾け、それに感動したのでは無かったが、
彼らの歌を聞いていると「どの曲にどう」ではなく「どの歌詞にどう」でもなく、とにかく過ぎ去ってしまった過去のあの頃を思い出す。
そして、胸が熱くなり、思わずうるうるとしてきてしまう。
最初のうち、静かに大人なコンサートという雰囲気で聞いていた場内も、この頃にはみなが青春時代に戻ってしまっていた。



中盤にはいってからは、それぞれがソロで3曲づつを歌い上げる。

13.Bright Eyes ※アート・ガーファンクルソロ
14.A Heart in New York※アート・ガーファンクルソロ
15.Perfect Moment※アート・ガーファンクルソロ

16.The Boy in the Bubble ※ポール・サイモンソロ
17.Graceland ※ポール・サイモンソロ
18.Still Crazy After All These Years※ポール・サイモンソロ

そして後半が始まる。


19.The Only Living Boy in New York
20.My Little Town
21.Bridge Over Troubled Water (明日に架ける橋)


やはりというか、「Bridge Over Troubled Water (明日に架ける橋) 」が最後の曲だった。
この曲がもう、とどめのように、うるうるしてしまった涙腺を全開に。


もうおしまいだ.....と。
そしてアンコールがあるだろうと席を立たず、拍手を送り続けてアンコールの2曲。
そう、この曲がまだだった。


22.The Sounds of Silence
23.The Boxer


この2曲が終わったところで帰路の混雑をさけるためにかなりの人達が席をたち、出口に向かうなか、それでも拍手は鳴りやまない。
二人はなかなか出てこない。


でも「まだ『あの曲』をやっていないんだ!」そう思って残ったのは私だけではないと思う。
それは実に見事な2段構えのアンコールだった。


24.Leaves That Are Green(木の葉は緑)
25.Cecilia


ああ、もうこれで本当におしまい...と思うなか、一人一人のバンドメンバーを紹介。
そう、今回のステージはバックバンドもとても素晴らしかった。
誰もに皆、惜しみない拍手が贈られた。
そして照明が消え..... そう思うなか、すべるように再びドラムスが入り、Cecilia!

26.Cecilia(reprise)


今回の公演ではスタンディングは無かったが、さすがにこの最後の「Cecilia」では座っていることはできなかった。





唯一残念なことといえばドームの音の跳ね返りのひどさ。
最初の1曲では「なぜこんな妙なエフェクトを故意にかけているのか?」と思うほどだった。
昨年のビリージョエルのコンサートの時は、アリーナ席で、この跳ね返りはほとんど気にならなかったが、今回はとてもひどかった。
追加となった武道館公演が羨ましい。


(セットリスト(ナンバー付きの曲名の部分)は、「あけぼの林檎園のひとりごと」の「サイモンとガーファンクル東京ドーム公演第二夜」から引用させていただきました。2回もの公演を聞いてらっしゃる、すごい、そして羨ましい。)