『McCOY TYNER TRIO』新春の良きものとの巡り会い


(ステージ終了直後)


ありがたいことに。久しぶりに大きなライブハウスを訪れる機会に恵まれた。
いくつかの選択肢の中から、騒々しすぎもせず、かといってソロでもない、落ち着いたトリオが良いと思って選んだのが、この日のステージ『McCOY TYNER TRIO』だった。
渋さの固まりのようなマッコイ・タイナーのピアノも良かったが、ゲストが思いのほかに素晴らしかった。
コルトレーンの名盤復活かと思うようなメンバーの中で、ヴォーカルを担当したホセ・ジェイムズの声に計らずもぽーっとなってしまいそうだった。
耳元で囁くように唄われたら、きっと男性でもとろけてしまうかもしれない、そんな声。


FOR ALL WE KNOW

FOR ALL WE KNOW


たまたまこのアルバムの4曲目に「Body & Soul」が入っていて、以前から伊藤君子の歌う「Body & Soul」を良く聞き知っていたので、思わず真っ先に聞いてしまったが、伊藤君子が演歌なら、このホセ・ジェイムズはバラードなのだろうなと思った。
そしてふと「バラード」を検索していたら、


バラード

バラード


ジョン・コルトレーンの「バラード」がでてきた。
なるほど、ハートマンの代わりにホセ・ジェイムズが歌ったはずだと思った。
聞く者に力を入れさせない歌い方、耳に頭にすぅっと入ってくる歌声、
それは手にしたグラスを口元に持ってくるのを忘れてしまいそうな感覚だ。



そしてもうひとつ、グラスと言えば、良いワインの巡り会いもあった。
前菜にローストビーフ、それにレバーのパテを頼んだいたので、それに合わせるワインをリクエストしたところ、「中くらいの重さの赤か、きっちりした白ではいかが?」ということで、白を頼んだ。
このリクエストでどんなワインが出てくるか、こっそり自分でも想像してみるのが楽しみであったりもするが、2本呈示されたうち、見慣れないプロポーションのボトルとエチケットのこのワインを頼むことになった。



チリ産のソーヴィニヨン・ブランだという。
『TORREON DE PAREDES RENGO』(トレオン・デ・パレデス)。
淡いグリーンがかった金色で、柑橘系もともなうすっきりした味は前菜の肉類にはぴったりだったが、適度な酸味や後味に残るちょとした苦みは、ロワールのソーヴィニヨン・ブランを意識しているのかと思うほど。
ニューワールドのソーヴィニヨン・ブランは香りがきつすぎる程のもの(特にニュージーランド産など)があって、個人的にはそれはどうかなと思ってしまうが、このワインはそこまではきつくなく、ほどよかった。
コストパフォーマンスもなかなか良いので驚いた。


きっちりと良い音楽に浸りつつも、適度に美味しいワインを飲める機会はなかなかない。
年の初めに幸先が良いかなと思う。