『江戸しぐさ』

最近は学校の入試問題や社員教育にも、「江戸しぐさ」が使われているらしい。
私鉄駅貼りポスターに、電車内マナーの「江戸しぐさ」を漫画化して載せていたのも記憶に新しいし、先だってはたまにしか見ないTVで、AC(公共広告機構)が流していたのを目にした記憶もある。


ひできさんからお借りした本。
いつでもどこからでも読める本だと思って持ち歩いたので、電車で一駅乗車の間にひらいては1ページ。
(一駅30秒ではそんなもの(笑))
乗り換えの電車待ちの間にひらいては1ページ。
そんな事をしていたので、随分長くお借りしているままになってしまった。


ページをめくっていくと、「江戸しぐさ」の項目ごとに、半〜1,2ページをつかって、説明されているので、とても読みやすい。
内容そのものは、「自分ではいつもそうある」と自信のあること、あるいは「そうでありたいと願っている」ことが大半であったけれど、ここで大事なのは「願っている」だけでは何の意味もなさないとう点だ。



身につけよう!江戸しぐさ (ロング新書)

身につけよう!江戸しぐさ (ロング新書)



6年前、引くに引けず、押すにも押せず、それまで6年ほど勤めていた会社を退職する直前に小さい会社を作った。
非常に景気の落ちこんだお寒い時期に、銀行の担当者からは「本当にこんな時につくるんですか?」と真顔で言われた。

自分では、なんとか作ったばかりの会社を最低3年は持たせたいと願った。
そのために、顧客に対してこうあるべきだという事を満身こめて実践してきた。
その時の私の頭の中は、まさにこの本にあるような「江戸しぐさ」を実践するということしかなかった。
前の会社で顧客に対してしようと思っていたのに、許されなかったことは、すべてここにあったからだ。



■初対面のルール「三脱の教え」(第二章p55)

初対面の人には、年齢、職業、地位を聞かないルール。
この三つが先入観になると公平な眼で人をみることができない。

■「ゆかしい」が美しい女性の条件(第六章p148)

美しい女の条件の第一は、生まれつきの見目形(みめかたち)だけでなく、後天的に自分の努力で身につけた「ゆかしい」雰囲気を持っていること。
「ゆかしい」とは知性に裏付けられた、心惹かれる魅力ある品性を表現した言葉で、何となくなつかしい、慕わしい、心がひかれることです。

■「働く」とは人のために動くこと(第三章p88)

働くという漢字は「人」のために「動く」というつくりになっているように、周りの人を楽にする、つまり端を楽にするから「はたらく」のです。・・・
朝飯前・使役・はたらくという三つの働きの中で、人間として最も評価されたのは午後の「はたを楽にする」働きでした。
江戸商人の一日は、1/3以上が、世のため、人のために費やされていたのです。これは現代のビジネスマンの一日と比較すると、雲泥の差があります。

さて、読めば読むほど、すべて心にかかる事ばかり。
そして、これがすべての日本人の心にとまって、実践されれば
どんなに「美しい国」に戻れるだろう、日本国首相さま。

江戸しぐさ」は週に何度かしかしない動作ではなく、毎日、朝起きた時から眠る時まで、
片時も身の回りを離れる事なく行える所作。
だからこそ、大量の書籍もインターネットもない江戸の時代に、人から人へ伝わった。
小さい子供達が覚えて大人になれた。

それが今、伝わらない。
断絶の危機感さえあることが憂える。