街の様相シリーズ〜1『鎮守の森効果』

普段通る見慣れた風景でも、そのときの季節、時間、そして天候などの相違で、今までになく強くその「景色の意図」を感じてしまうことがある。


今日は所用で午後から銀座へ、そして有楽町にまわり、有楽町駅前の『東京国際フォーラム』(設計:ラファエル ヴィニオリ建築士事務所)の前を通った。
冬の間は落ち葉がクルクルと舞う、寂しささえ感じる並木が、今は葉を沢山茂らせて、その並木は暗く奥にいくにつれ、何も見えない程になっている。
この暗さの急激なグラデーションが、距離もない空間を、深淵のように深く感じさせる。
それと同時に、奥に進めば心のよりどころとなる神仏さえいるような感覚に堕ちいり、つい足を運んでしまう。



この建物はJRの線路側には険しい崖のような、無機的な壁がそそりたつ。
一方でその内側には、無意識な人を吸い寄せてしまう有機的な森がある。


外界がきびしければきびしい程、天候が快晴で日差しが強ければ強いほど、内外のコントラストは強まり、効果が高まり、人々は吸い込まれていく。
これはまさに、現代の『鎮守の森効果』ではないだろうか。


以前、ここには旧東京都庁舎(設計:丹下健三)があった訳だが、そこは決して人々を守る場ではなかった。
当時、人々は制度という、反自然的な力によって、やむなく強制的に吸い込まれていた。