秘湯『新湯温泉』


車でいけるのだから、秘湯というのが正しいかどうか判らないけれど、それでもやはりここは秘湯の部類だなぁ...とつくづく、そんな温泉です。


大浪池」から降りて、炎天下の山登りではありませんでしたが、汗をかいた後といえば....?
ビール? いえいえ、やはり温泉でしょう。
日頃はジムでのトレーニング程度にしか使っていない筋肉を使った後で、張りをとるにも暖まる温泉が一番。


霧島一帯は温泉の宝庫、それも硫黄泉やら食塩泉やら明礬(みょうばん)泉、鉄泉、等々いろいろな種類の源泉があり、しかも大きく豪華なお風呂のある温泉ホテルから一軒宿まで、これまた多種。
迷ってしまうところですが、大きなホテルの大浴場ではあまりに面白みなく、せかっくの霧島、是非「鄙びた湯」に入りたいということで『新湯温泉』へやってきました。


新湯温泉』は先の「大浪池」から霧島スカイラインを南にすこし戻り、鹿児島市内からきた道との三叉路を高千穂河原、霧島神宮方面に曲がります。


途中、こんな動物も道ばたに現れ、悠々と草をはんでいますが、車がそばによっても逃げる気配なし。
子連れの親も逃げる様相がありません。
どうも餌を与える人がいるのでしょう、慣れてしまっているのが気がかりです。
(人間の食べるスナック菓子など、脂と塩まみれで体に良いはずないのです。)



さて、三叉路から曲がって2-300mのところで『霧島新燃荘』の看板を目印に細い道を左折します。
左右には蒸気が噴き出している崖の肌をみながら、ちょっとした谷間におりていくと、この『新湯温泉』の一軒宿『新燃荘』が現れます。



ここはもともとが皮膚病に効果の高い湯治場で、明治時代に癩病を煩っていた人がかみのお告げから入浴したところが治癒してしまったというのがこの湯の発見だと牧園町郷土史にはあります。
その後は一般の皮膚病患者が湯治に多く押しかけ、今もなかなか治らない皮膚病やアトピー、水虫に悩む人達に特効泉として大変人気があるそうです。


新湯温泉 適応症

水虫・田虫・湿疹・蕁麻疹・疥癬アトピー性皮膚炎・高血圧。神経痛・リウマチ・痔疾患・その他の皮膚病・ニキビの消失・老若とわず顔面脂肪消失後化粧の塗りが良くなる。
毛細血管が著しく拡張、全身の血流が良く成る。
現在利用者が年間延べ5万人を越えています。


霧島に多い硫黄泉ですが、ここは特に大量の硫化水素を含んだ温泉で、これほどの高濃度の温泉は全国でも希とか。


さて、宿の入り口で入湯料500円を払い、さらに階段を下りていくと、男女別の脱衣場があります。
他に誰も女湯にいないのを確認して、そっとカメラをタオルでくるみ浴場へ。(湿気と硫黄、カメラは惜しいので、かなりの冒険でした。)


室内とはいっても、脱衣場の外に作った湯船の上に、大きな小屋がけがしてるような状態で、間に男女用の仕切りがありますが、あちこち手作業で補修してあるのがなんとも心細くもあり、大きなホテルの浴場にはない趣でもあり。



お湯は硫黄泉に一般的な乳白色に濁ったお湯ですが、大気を反射して、少し離れたところからみると青乳白色に見えます。



こんな感じの乳白色、透け具合ですが、ここはさっと流して、次の写真にどうぞ。(笑)



湯船の脇からは、「露天風呂出入口」とあり、そこにはお世辞にも綺麗とはいえない、前の人が使い絞っただけ?というバスタオルが干してあります。
外に露天風呂があるのですが、混浴で女性はこのバスタオルを巻いて入っても良いという事のようらしいです。
考えてみればこれほど高濃度の硫化水素で強力な殺菌効果のあるお湯です、誰が使ったあとでもいいのかもしれません。



露天風呂は観光目的ではないため、コンクリートで固めた池のような感じ。場所も更衣室に入る真ん前の人の目が一番多い場所です。
すでに老齢の男性が一人静かに入っていらしたので、お風呂から出て着替えをして帰る際にこの角度で撮りました。



本当は少しだけ上がり湯をかけて出たかったのですが、浴室内の蛇口からは水は出るもののお湯は出ず、そのまま出てしまいました。入っては少し出て休み...を3度ほど繰り返し、都合30分ほどでしたが、湯上がりはぽかぽかと暖かく、硫黄のにおいもバッチリ。
周囲は蒸気を吹き上げ、硫黄の匂いがあちこちでする霧島なので、あまり感じませんが、このまま鹿児島市内へいくとさぞ硫黄臭いことでしょう。(市内で立ち寄りたい場所があったので、どうしようかな...という気分でした。)


温泉の入り口には、いろいろ注意書きがありましたが、その中でも特に「30分以上の入浴を禁ず」が何度もありました。
強い泉質のために湯あたりをしやすいので、30分以内と理解してそれを守って出てきました。
後に東京へ戻ってから知ったのですが、ここは平成元年に入浴中の親子が硫化水素ガスで亡くなる事故があったそうです。これだけの強い硫黄匂い、また日によっては周辺で吹き出す硫化水素ガスの濃度も変わるのでしょうが、その後、室内の浴場は換気設備を整え直し、再開したそうです。
それを考えると、ゆったり湯治として入るには、屋外のぬるめの露天風呂が安全なのかもしれません。




『新湯(しんゆ)温泉』、一軒宿は『新湯温泉 霧島新燃荘』


鹿児島県霧島市牧園町高千穂3968
tel:0995-78-2255
fax:0955-78-2999



立寄入浴:大人500円、小学生300円、幼児200円 7時〜22時。


旅館:一泊二食付き 7,350円〜 素泊まり 4,725円
自炊:5日以内 一泊大人 3,150円〜

他に温泉水の販売: 1リットル 50円〜