『TVピープル』読了


TVピープル
『飛行機』
『僕らの時代のフォークロア  ーー高度資本主義前史』
『加納クレタ
『ゾンビ』
『眠り』
の6編収録。


いずれも不可思議な話だが、かといって全く「あっちの世界」の話でもない。ふと星新一ショートショートを思い出す。それに近いかもしれないが、文体はあくまでも村上春樹だ。


『僕らの時代のフォークロア  ーー高度資本主義前史』これは直前まで読んでいた『国境の南、太陽の西』と重なる。やるせない、切ない男女間の関係と距離と思惑。明かに『国境の南、太陽の西』のための布石かきっかけとして短編小説にしたのだろう。
もし、私があるルールを決めずに、ばらばらに村上春樹の作品を読んでいたら、この事は何の意味をもなさなかったかもしれないが、ほぼ書かれた年代順に、しかも長編・短編、エッセー、紀行文というジャンルをまんべんなく読んできたため、この2つの短編と長編小説の繋がりは単なる個々の小説を越えるような面白みを与えてくれた。


他にも『TVピープル』『眠り』といった書く短編にも、後の作品と関わりの深いエッセンスが潜んでいるに違いない。




TVピープル (文春文庫)

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