「泡」


「泡」(あわ)という言葉をつかった慣用句には、あまり良い意味で使われない場合が多いようだ。


「泡を食う」「泡を吹かす」「泡を吹く」「泡を噛む」「水の泡と化す」・・・


できればこんな言葉を使うシーンには出会いたくない。



なのに、この「泡」だけは別格。
鼻の頭につこうがものともせず、中身を飲み干したくなる。




普段、炭酸が苦手であまりビールを飲まない私も、空気の乾燥するこの時期だけは特別。
街を歩いて喉が渇くと、無性にビールが飲みたくなる。
といっても、瓶ビールの炭酸の強さには勝てず、こうしてビヤホールやビアレストランで、時間をかけてゆっくりグラスに注いでくれる生ビールが良い。


注がれたビールの目前に置かれた瞬間シャッキっとした泡も、ものの数十秒で小さい泡がいくつかまとまって中ぐらいの泡となる。中ぐらいの泡はさらにまとまって、大きな泡となり、そしてそれは大きくなりすぎた自分を維持できずに断ち消えていく。
「おや、これはなんだか企業のようだ...」
とちょっと思いつつも、とりあえずそんな複雑な事は考えるのをやめて、グラスの中身を飲み干すのが良いに決まっている。