『遠い太鼓』を読んでいる。


このところまとまった読書時間をとれずにいた。正確には諸々のことに忙殺されて、眠る前のわずかな時間さえ読書に充てるという気力が無くなっていたのかもしれない。最近は小説をゆっくりゆっくり読むという事にちょっとした喜びを見つけてしまったのだが、疲れすぎた気持ちでは残念ながらそれは受け入れられないことも判った。


そこでこんな時に読むものとえば、旅行記、紀行文の類。
街中の様子を思いうかべ、香りを彷彿し、喧噪を聞き、それなのに読んでいて疲れてしまえば、私はただページを閉じるだけ。こんな自分に都合よい楽な関わりができるのが紀行文だからだ。



今、村上春樹がイタリアを旅し、滞在した時の『遠い太鼓』を読んでいる。
賞味570ページもある手にして重たい文庫本だ。しかも中は7ポイントほどではないかと思うような細かい文字がびっしりと綴られている。どうりで電車の中で読むには辛かったはずだ。


この本を読むおもしろさは単にイタリアの街や様子を知るだけではなくて、もう一つ、村上春樹の作品をいくつも読んできている者にだけ判るおもしろさだ。
村上春樹はイタリアをはじめ、ロンドンなどヨーロッパに旅し、そこに数年暮らしている間に『ノルウェイの森』や『ダンス・ダンス・ダンス』といった長編小説を書いている。そういった小説に影響を与えている何かが綴られた紀行文の中に見え隠れする。余計なお世話かもしれないが、それを探す楽しみなのだ。


遠い太鼓 (講談社文庫)

遠い太鼓 (講談社文庫)