春の讃岐うどん&こんぴら歌舞伎行脚その12『四国こんぴら歌舞伎大芝居 〜金丸座〜 』

 

(春の讃岐うどん&こんぴら歌舞伎行脚その11『釜あげうどんで朝食を〜長田in香の香〜』 より)



いよいよ琴平到着。
土讃線琴平駅そばの公営駐車場に車をとめ、金丸座へと歩いて向かいます。




いつものとおり、狭いアーケード街(新町東レトロ街道)をぬけて、金倉川の橋を渡るところで、歌舞伎出演者の幟。
青空にはえるカラフルな幟は、これをみるとまた今年もやってきた、という感慨が湧きます。




ここから金比羅山の参道が始まります。
両脇には土産物店がならび、賑やいでいますが、金比羅さんの有名な階段はまだまだ先。
毎回通るたびに思うことは、いい門前の風情なのに、電信柱と電線が邪魔だということ。




緩やかな階段が少し始まった頃、土産物街を左手に降りて急坂を登っていくと、公演場所『金丸座』に到着。




木戸の前にはすでに沢山の来場者が待っています。
この広場にはお弁当や飲み物、当日のパンフレットなどを売る店もでています。
今日の公演は正確には『第二十五回「四国こんぴら歌舞伎大芝居」』といい、私は5年前から毎年楽しみに公演を観にきています。




会場内の案内をする「お茶子さん」と呼ばれる、揃いの着物に黄色の帯をしめた女性。
このお茶子さんはボランティアで全国に募集が出されていますが、大人気なのだそうです。
お茶子さんの後ろ姿が素敵で、入場して席まで案内をしてくれる際に毎回ここで写真を撮っています。
立ち止まっていただくわけにもいかず、いつもブレぎみ。




今回の席は二階の桟敷席。
当時の人の体格をもとに作られているので、大変狭く、手荷物もあるので足を伸ばす余裕もほとんどありません。
それでも、一旦始まれば夢中になって見てしまい、あとで足の痺れに気が付く始末。


この建物には照明はありません。
公演は日中のみ。
1階、2階それぞれの側面に窓があり、障子戸と板戸の組み合わせになっています。
シーンに応じて、一斉にその障子戸と板戸の開閉をし、明るさの調整をします。
舞台は蝋燭の光。
揺れ動く蝋燭の炎で、当時はさぞ役者が妖艶に見えたことでしょう。




昔はこの大梁をささえるために、4本の大柱がたっていたそうです。
当然、その柱が邪魔になって見えなくなる席があり、改修工事をした際、大梁に鉄骨を入れて強度を持たせ、柱を外したそうです。
この改修工事は「平成の大改修」といわれ、芝居小屋ならではの仕組みの発見がたくさんあったそうです。


昭和50年度の移築大改修以後、昭和60年から「四国こんぴら歌舞伎大芝居」が毎年開催されるようになり、全国の歌舞伎ファンの方々がこの旧金毘羅大芝居「金丸座」を訪れ、春の風物詩として盛況をいただいております。
 この度、日本最古の芝居小屋として国の重要文化財として指定されているこの小屋を、現代でも安心して観劇いただけるよう修理後30年経過した建物の健全性と耐震性能を調査し、今後の維持管理について検討することになりました。
調査の結果、梁のねじれや壁の亀裂は建物の保存に支障がないことが判かりましたが、耐震診断の結果は、今後の小屋の活用には無理があることが判明しました。
 そこで天井裏全面に鉄骨で構造補強を施すことになりました。偶然、補強を施すことにより、今まで住民からの待望の大梁を支えていた四本の支柱を除去することが可能となり、本来の姿(江戸時代の内装)に戻すことができました。
 そして、驚くことに調査の過程で、ちょうちんを吊っていた観客席上方の大梁に「ブドウ棚」と「かけすじ」の痕跡が発見されましたので、あわせて平場及び向う桟敷天井部には「ブドウ棚」を復原し、花道上部には「かけすじ」を復元整備することとなりました。

 ※ 「ブドウ棚」とは、天井に竹を格子状に組み荒縄でしめたもの 
 ※「かけすじ」とは、役者が宙吊りするのに使用する演出装置のこと

平成の大改修


舞台すぐ前の天井には出演者の紋の入った提灯。
幟とともに雰囲気を盛り上げます。

今回の主な役者は、

中村勘三郎中村屋
中村扇雀 (成駒屋
坂東弥十郎(大和屋)
片岡亀蔵  (松島屋)
中村勘太郎中村屋
中村七之助中村屋




開演前の幕が引かれた状態。
これから先、開演中の撮影は当然ながら禁止ですので、写真はありません。


演目は


一  平家女護島 俊寛(しゅんかん)


   『平家物語』に題材を得た作品。喜界が島に流された勘三郎演じる俊寛の心の動きが見物でした。


二  恋飛脚大和往来 新口村(にのくちむら)


三  新古演劇十種の内 身替座禅 (みがわりざぜん)


   狂言の『花子』(はなご)を題材にしたもので、恐妻家の男とそれを追い詰める妻を演じる扇雀の迫力が
   おもしろおかしくも、素晴らしかったです。





さて、歌舞伎といえば、幕の内に食べるお弁当。
チケットの中に入っている引換券で、お土産を引き替えます。
お土産には、木戸札、うちわ、お茶、讃岐うどんの他、午後3時40分からの公演では地元の銘菓の詰め合わせ、午前11時からの公演では幕の内弁当が入っています。
今回は午前11時からの部でしたので、お弁当。




中はこんな具合。
右下の鰆(さわら)の押し寿司は讃岐ならではのものです。
本当はビールと一緒に頂きたいところですが、たいていそれまでのうどんでおなか一杯。
お茶を飲み飲み、幕間にお弁当をいただいて、後半を待っています。




公演もおわり、外にでてみればまだ午後2時すぎ。
日も高く好天のこの日は暑いほど。
帰り道の参道でのお楽しみは『丸金醤油』の『しょうゆアイス』なのですが、今年は『和三盆糖わさんぼんとう)ソフト』をみつけ、そちらを食べてみました。
『しょうゆアイス』ほどのインパクトはなく、ふわっとした優しい和三盆糖の甘さのするソフトクリームでした。



また来年4月、この地を踏めることを、そして歌舞伎を見られることを願って、琴平を後にしました。



(「春の讃岐うどん&こんぴら歌舞伎行脚」 おしまい)




『金丸座』(旧金比羅歌舞伎大芝居)



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