すね毛桜と立会川



なんとも品のなさそうなタイトルにしてしまったが、実はとても可愛らしい。


そもそも、いつ頃のことかも思い出せないのだが、飯田橋のお堀沿いを歩いていた時に、ちょうど満開だった桜の樹々に見慣れない妙な咲き方を発見して、そこで誰かが、


「変なの枝じゃなくて、木の幹から生えて咲いている!」
「すね毛みたいなところに咲く花ね。」
「えっ、それじゃ、これって、すね毛桜?!」


そんなことを言い出したものだから、もうとまらない。
次々に見ていく樹のことごとくに、このすね毛咲きがあって、笑い転げながら歩いたことがあった。




どうもこの咲き方は若い樹にはあまりみられなくて、年のたったしかも何度も枝打ちをしたのではないかと思う樹に見られるような木がする。




ちょうど満開を迎えたこの桜並木は、満開だからといって誰が花見に繰り出すでもなく、静かな花を咲かせている。
目黒線武蔵小山という駅から南に下る、交通量もさほど多く無い道路沿いのこと。




この細い道路は昔の街道筋であったわけでもなく、実は「立会川」(たちあいがわ)という二級河川を暗渠にして、その上を通っている。
「立会川」というと京浜急行本線に「立会川」という駅があり、そこではしっかりと川があるのが見られるが、すこし遡ればすぐに川が忽然と消え、あとはただの住宅地となってしまう。
ところが地図を追うと、川の姿はないものの第二京浜付近をこえたあたりから車の入らない公園のような道となり、そしてそれが、今度は中原街道を越えたところから、この桜並木となっている。




この写真はちょうど、桜並木が始まったすぐ、昭和大学付属病院の脇となる。
入院、通院している人にとって、4月のこの桜の花は心なぐさめるものだろうな...と思いながら、いつも過ぎている。



ちなみにこの桜の道、武蔵小山の駅から逆方向には一時無くなってしまう。
道路拡幅もされしっかり2車線の道路となっているのだが、がっかりする寸前に、再びその道は様子をかえて、中央の立会川暗渠の上を桜並木のある歩道、両脇が車道となる。
ところどころの狭い交差点には「橋」と名のついたプレートがつき、以前はここに川が露出して流れていたと知ることができる。
住宅地の中を並木沿いにずっと歩いて行くと、最後はその道が参道となり、ある神社の境内に入ってしまう。
「碑文谷八幡宮」だ。
いかにもここから流れ出しているように思えるのだが、実はさらに暗渠は続き、実際の立会川の始点はさらに北上し目黒通りを越えた「碑文谷公園」の池にあるらしい。
そしてもう1つ、武蔵小山駅からすぐ、この緑地道にはいらずにいわくありげなカーブの道なりに進んでいくと現れる「清水池公園」にも始点があるといわれている。